坂口恭平「Pastel」
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毎日SNSに上がる作品を楽しみにしていたのですが、ついに画集が刊行。
「坂口恭平の変化の記録。」と光の変化を感じる。 そしてページを巡っていくと誰しもが刹那で変化してる事を考えながら、パステルで記録された日常の光を追って見入ってしまう。
はじめてのパステル画、はじめての風景 ーー画家・坂口恭平、第二章開幕。
個展チケット即完売、各界著名人注目、著者SNSで話題沸騰のパステル画集第一弾がついに刊行。
畑へと向かう道、江津湖、有明海、そして光と影、色彩、温度、空気……世界を徹底的に観察して描き切ったパステル画を厳選して収録。
2020年4月から8月までの風景の記録であり、坂口恭平の変化の記録。
僕は毎日発見している。風景を。今まで目に入らなかったことにどんどん焦点が当たっている、当たった瞬間に別のものに移動している、それくらい僕は変化している。風景も変化している。パステルをもつ指も変わり、指先はいつも動いている。その動きそのものが興味深いから、止まらない。
それくらい僕は何も知らない。空の青について何も知らなかった。今はいくつものパステルの色を塗り重ねる。晴れた日にも暗い色が入っている。光と影がそこら中に満ちている。躁鬱病の僕は鬱を忌避し、躁をあっぱれだと思っていた。しかし、晴れた日にはとても強い黒い影が生まれる。頂点があり、どん底があるのではなく、気分の上がり下がりではなく、気分、ムード、感情の、色調があるようなものが、その途端に、僕の内面もエベレストから海溝まであったジオラマが一気に粒子になって崩れ落ちて、ふわふわとそこら中に浮いている大気になった、自分の体が気象になった。線も面も粒子に戻って、そこら中に気配として残っているだけになった。
ーー「畑への道」より抜粋